熔融亜鉛メッキによる防食
熔融亜鉛メッキは、鋼製品、及び鋼構造物の防食手段として一般的に使用されている。
熔融亜鉛メッキ処理後、化成処理(リン酸亜鉛処理)し、塗装したものは比較的安定した防食期間を維持できるが、熔融亜鉛メッキ処理のみで使用される大型構造物は、鋼材端面、及び使用材の薄いところは、設計厚みに到達せず(通常30〜60%)、腐食環境下ではいち早く、溶損し、腐食が発生する。
同時に非メッキ部位(溶接部、添接板、高力ボルトを含む)は、塗装系にて処理されるため長期防食手段として、多くの問題点が解決されていない。
熔融亜鉛メッキの問題点
1.ボックス形状は、熔融亜鉛の流動性をもたす為、開口部(穴)を作る必要あり、結果として、溶接部が発生し、腐食部位を増やすこととなる。
2.熔融亜鉛温度は470〜500℃範囲になり、熱歪みが発生する。コバ、及び材料厚みが薄いところのメッキ厚みが、設計通りに保持出来ない。通常
40〜60%程度の厚み。
3.大型、及び長尺構造物のメッキ処理業者が限定され、納期、及び搬送費用が絶えず問題点として指摘される。
4.大型構造物は、亜鉛メッキ皮膜の化成処理(リン酸亜鉛処理)ができず、塗装の密着力を安定化させられず、短期間にて塗膜が剥離(2〜6年)する。
5.メッキ処理のみの鋼材は、塩害、及び酸性環境(酸性雨、雪、霧)に脆弱であり、白錆び(塩、酸化亜鉛)となり、急速に溶損し消滅する。
6.製品形状により、熔融亜鉛メッキによる熱歪みが発生し、矯正加工のコストが算出困難である。
7.現場溶接、及び添接板部(高力ボルトを含む)のメッキ処理が出来ず、有機ジンク塗料の塗布が現状処理法であり、短期間にて錆び腐食が発生する。
亜鉛メッキの耐食性試験 (JIS Z 2371 塩水噴霧試験)
※SS400 75×150×4.3tに、JIS規格 熔融亜鉛メッキ
目付量 厚み |
試験時間 |
240 |
480 |
600 |
840 |
1080 |
1560 |
2040 |
240g/m2 (34μm) |
16μm |
5μm
(60%
錆び発生) |
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360 (50μm) |
36μm |
25μm |
18μm
(40%
錆び発生) |
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430 (60μm) |
45μm |
36μm |
29μm |
19μm
(40%
錆び発生) |
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550 (77μm) |
59μm |
50μm |
42μm |
37μm |
29μm |
19μm
(30%
錆び発生) |
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850 (120μm) |
105μm |
96μm |
86μm |
69μm |
54μm |
35μm |
22μm |
※50μm以下の厚みは、部分的に錆びを発生すると周辺部が急速に厚みが減少する。
※厚測定は、電流厚測定器を使用3測点の平均値(測定部の白錆びは除去した)
イオン化傾向の高い亜鉛は、塩害には脆弱であり、酸性腐食環境では更に溶損速度を速めることは、一般的に知られていることである。
1980年以後は、防食年月の延長を目的とした、亜鉛合金メッキが、欧米、及び日本にて模索され、主として亜鉛、アルミニウム合金メッキが、配合比を変えて使用されたが何れも、大幅な防食期間の延長に成功してはおりません。
溶射業界においても、5〜13%アルミ合金亜鉛ワイヤーが開発され、純亜鉛より優れた防食性が期待されたが、20〜30%程度の耐食性能が向上した程度です。
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